アウトプットの効用
アウトプットとは、得た知識・技能や経験したことを何らかの形で発揮することである。アウトプットすることの重要性は、説明するまでもない。そして、アウトプットの必要性は、最近になりますます声高に叫ばれている。それは教育界も例外ではない。
学習指導要領が改訂された。今回の改訂により、「主体的・対話的で深い学び」という、いわゆるアクティブ・ラーニングの視点が明確になった(以下、AL)。ALの視点での授業改善は、簡単に言うと「外化」を授業に取り入れる、ということである。
「外化」とは認知科学用語で、自分の考えを他者に説明するために文章に書いて示したり、図を作ったりして理解の過程を見えるようにすることを意味する。要するに、「アウトプットする」ということである。
自分の学習経験を振り返ってみてもわかるように、ただ話を聞いているだけでは学習内容はあまり理解できていないことが多い。だけど、そこで何らかの活動に取り組むと、学習内容の理解が深まる。つまり、「外化」をすることで学習内容を理解することができるのである。
これからの教育では「外化」―アウトプット―は必須のものになってくるのは間違いない。それは多くの論者が述べている。だから、今回のテーマである「アウトプット」について考えるということは、これからの学校教育を考えていく上でも必須のものであるのだ。
アウトプットとインプット
アウトプットを考えるということは、インプットを考えることでもある。なぜなら、自分の中にないものがアウトプットされることはないからだ。
インプットをする。インプットをしたらアウトプットをする。アウトプットをしたら、またインプットをする。この繰り返しである。
インプットとアウトプットを繰り返すが、それは円のように同じ所をただぐるぐる回っているというわけではない。なぜなら、インプットとアウトプットを繰り返すたびに少しずつ成長や前進しているからだ。
そして、自身の成長や前進を実感すると、さらにインプットをし、アウトプットを行うことになる。そうすることで、さらなる成長や前進を得られる。
このように、インプットとアウトプットを繰り返し、螺旋階段をを上るように成長や前進をしていく。これを精神科医の樺澤は「成長の螺旋階段の法則」と呼んでいる。
これまで述べたことでわかるように、アウトプットとインプットはいわば車の両輪のような関係である。どちらかだけではなく、どちらも必要なものなのである。
アウトプットのあれこれ
前節までで、アウトプットのことやアウトプットとインプットの関係を述べた。
ここからは、もう少し具体的に、僕のアウトプット法についてまとめてみることにする。
①書く 僕は、いろいろな媒体に思いついた時に、とりあえず記録をしている。そうすることで、自分のしたことや考えたことを忘れ去るということはなくなる。だから、とにかく書いている。 使い古されたフレーズであるが、書くことは考えることだ。書くことは自分の考えを整理することでもある。つまり、書くことこそに思考が生まれるのである。だから、書くことは成長の前提なのである。書くことを、自分の生活に採り入れるべきか採り入れないべきか、と迷う対象ではないのだ。 もしかすると、ここで「書く時間なんてない」「書く必要のあることなんてない」等の反論があるかもしれない。でも、そんな反論はちゃんちゃらおかしい。そんなの書かない者のただの言い訳だ。書けない者ではない、書かない者だ。自分の考えていること全てを書き切れることなんてない。 この論のように、自分の考えを書くということを続けているが、書き切れたという感触はない。むしろ、書けば書くほど―考えれば考えるほど―、書かないといけないことが増えているのではないか、とさえ思う。 だから、今でもヒーヒー言いながら、でも嬉々として書いているのである(笑)。
②話す 周りの先生には、なるべく多くのことを話しているつもりである。 「今日は、保護者からこんなこと言われたんですよ」「子どもを指導したんですけど、上手くいきませんでした」「この授業を少し工夫してみたんですけど、裏目に出ました…」等々。いろいろと話している。周りの先生は話半分で聞いてくれているけど(笑)。 このように話している時に、少しずつ自分の中で成功したことや失敗の原因や解決策等の気づきが生まれる。そして、話し終わった後に、自分の中で何某かの気づきを得られる。そのままでは忘れてしまうので、上記したようにすかさず書く。 話すことでもちろんコミュニケーションを図ることもできる。そうすると、自己開示にもなり、次第にいろいろな話をできるようにもなってくる。そうすると、気づきを得られる機会がさらに増える。つまり、インプットの量も増えていくのである。
③行動する 同僚の先生の話を聞く、本を読む等のインプットを行うと、思わず「やってみたい!」と思うことがある。そう思うことがあれば、なるべく実践するようにしている。つまり、行動に移す、ということである。 しかし、実践してみると上手くいくことばかりではない。むしろ、失敗することの方が多い。そこでまた考えることになる。どうして上手くいかなかったのだろう、と。そして、もう一度実践するか、ここで止めておくかを考える。 このように、行動することで自然とフィードバックが行われることとなる。フィードバックを行うことで、さらに良質なインプットが促される。そうすると、アウトプットの質も上がってくる。 だから、考えながらも行動する、ということを大切にしている。
④脳内語り このタイトルからして、ちょっとヤバい(笑)。 語る、ということはヘタをすると、独りよがりのものになる。また、語ってこられると鬱陶しく思われやすい。だから、なかなか語る、ということはハードルが高い。 そこで、妄想で語ることにする。 脳内に、子どもや同僚や妻を置き、彼ら彼女らに語る。本当に語っているかのように一言一句考えながら(笑)。ちょっとキモいけど、そうやって脳内で語ることで、多くの論や考えができあがってきている。 かなり変なアウトプットのやり方だけど、僕にとっては大切なアウトプット法である。 |
参考・引用文献
アクティブラーニング型授業の基本形と生徒の身体性 (学びと成長の講話シリーズ)
- 作者: 溝上慎一
- 出版社/メーカー: 東信堂
- 発売日: 2018/03/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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学びを結果に変えるアウトプット大全 (Sanctuary books)
- 作者: 樺沢紫苑
- 出版社/メーカー: サンクチュアリ出版
- 発売日: 2018/08/03
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