小さな教室からの挑戦

小さな教室でのささやかな挑戦を書き綴ります。

本が持つ力

 本には「力」がある、と思っています。どんな力かと言うと、「読む者の心を揺り動かす力」である。本は、心に響いてくるものであり、心のスイッチを押してくれるものである。

 本が心を揺り動かし、心のスイッチを押してくれるという原体験を与えてくれたのが『うわさのズッコケ株式会社』である。この本とは、確か小学校の高学年の時に出会った、と記憶している。

 本書は、押しも押されもせぬ児童文学の傑作の一つである「ズッコケ三人組シリーズ」の一冊である。

 「ズッコケ三人組」とは、花山第二小学校6年1組のハチベエ、モーちゃん、ハカセの三人組のことである。その三人組がなぜかいつも突飛な事件やドタバタの冒険に巻き込まれて(巻き起こして?)しまう、という物語である。

 堤防の釣り場でイワシ釣りを楽しむ三人組。あまりの人の多さと近隣に食べ物屋が無いという状況の中で、彼らは弁当やジュースを販売することを思いつく。一度目で大繁盛の結果となる。それに気を良くし、彼らは事業拡大のため「株式会社」を設立(もちろん法的な登記とかは無しで・笑)。

 クラスメイトに出資を募り、会社は拡大。会社は順風満帆と思われたが、そこには意外な落とし穴が待ち受けることなる…。何とイワシのシーズンが終わってしまい、釣り人がほぼいなくなってしまったのだ。会社は倒産のピンチを迎え、株主総会は紛糾。そんな折に、モーちゃんのお姉さんの高校で出店できるチャンスが巡ってくる。そこで何とか在庫を全て処理し、儲けを出すことになった。

 最終的には社長であるハチベエが「疲れた」という理由で(ここが子どもらしさと言うか、ズッコケ三人組らしさだよね・笑)、会社は惜しまれながら解散することになり、本書は幕を閉じる。

 小学生当時に感じたことは、「面白い! よし、株式会社をつくろう!」である(笑)。いや、無知って素晴らしい(笑)。実際に株式会社を設立することなんてなかったのだけれど、数日は子どもなりに真剣に考えたように記憶している。

 この本に「心を揺り動かされた」原体験こそが、現在の自分の読書意欲の原点だろうと確信している。繰り返すが、本には「力」があるのだ。

 そんなことを思い返しながら、この夏もだらだらだと読書を楽しんでいる。

うわさのズッコケ株式会社 (ポプラ社文庫)

うわさのズッコケ株式会社 (ポプラ社文庫)