小さな教室からの挑戦

小さな教室でのささやかな挑戦を書き綴ります。

「べき」論を疑う

 今回は、『学校って何だろう―教育の社会学入門』を紹介する。この本は、1997年9月から98年3月まで、『毎日中学生新聞』で連載された文章を基に再構成されたものである。よって、読者対象を中学生とし、書かれたものである。だから、中学生以外が読むには値しない、ということではもちろんない。読者対象は、「学校教育について考えたい者」としている。

 著者は、「どうして勉強するの?」「校則はなぜあるの?」といったテーマから書き始めていく。中学生達が引っかかる(突っかかる)テーマではないだろうか(笑)。

 だが、著者は中学生が抱く、引っかかりや悩みや不満を解決する「正解」は提示しない。むしろ、意図して「正解」を用意していないのだ。つまり、著者は、巷で騒がれるような、「学校はこうであるべきだ」や「子どもはこうであるべきだ」とか「教師はこうしなければいけない」と言った「べき」論に議論を帰結させようとはしない。

 「べき」論が当たり前の前提としていることを別の角度から見直してみる。そうすることで、学校について、決まりきったものの見方に捉われず、もっとオープンな議論ができるようになる。著者は、そのようなことを志向している。

 学校、教育を取り巻く問題、子どもたちの行動等の問題、様々な問題がある。そこでの行動や対応が正しいか間違っているか、善か悪かの判断ができないようなことでも、学校という場所では、教育という観点から見て、善い・悪いの判断が行われる。それも、行動そのものよりも、態度―心のもちよう―といった面で判断される。だからか、世間一般(これも怪しいところがあるけれども)の考えや感じ方とかけ離れた判断を下すこともしばしばである。

 そのような学校、教育の問題点をも炙り出すような構成となっている。だから、本書は中学生のみならず、教育者にとっても必読の一冊である。

学校って何だろう―教育の社会学入門 (ちくま文庫)

学校って何だろう―教育の社会学入門 (ちくま文庫)