小さな教室からの挑戦

小さな教室でのささやかな挑戦を書き綴ります。

赤坂真理という感性

 赤坂真理というライターを知っているだろうか? 僕は、数年前の夏、赤坂真理の手に入れられる著作を貪るように読んだ。去年の夏は赤坂真理と共に過ごしたと言っても過言ではない。

 その中でも紹介したい作品が『東京プリズン』である。毎日出版文化賞司馬遼太郎賞、紫式部文学賞受賞作とあって、もしかすると名前は聴いたことがあるかもしれない。

 この作品のテーマはズバリ「天皇の戦争責任」である。

 この物語の中心には、30年前、アメリカの小さな街に留学した16歳の日本人の女の子が登場する。そして、その少女は、テーマが「東京裁判」、いや「天皇の戦争責任」のディベートの授業に参加させられる描写がある。そこで、少女は、大半の日本人が忘れてしまったこと、なかったことにしてきたこと、考えまいとしてきたことに激突する。

 どういう結末を迎えるかは、自分の目で是非確かめてもらいたい。ここで、筆者が挑んだことは、「新しい時代」を迎えるための「新しいマインド」をつくることである。そのために、「天皇の戦争責任」というタブーとも言えるようなことをテーマとし、「古いマインド」を誠実に総括し、清算しようとしたのである。

 このようなことを、現在と過去を激しく行き来し、ベトナムの結合双生児が登場し、ヘラジカの大君と交信する等―この記述だけだと何が何だかわからないこと―、様々なことを巻き起こしながら物語を進めていく。全く伝わらないでしょう(笑)。

 他の著作も難解というか、やはり共感しづらいものが多い。読むことを途中で断念する者も多いように思う。しかし、作品を読んでいると共感することは少ないが、自分では至ることができない記述(感性)に出会うことがある。

 そこで出会う言葉は、理論的というより皮膚感覚的とでも言ったらよいであろうか? 

 読み進めている内に、言葉では表現できないような感覚を、見事に言葉で表現している文章の数々に出会うことができるであろう。

東京プリズン (河出文庫)

東京プリズン (河出文庫)