小さな教室からの挑戦

小さな教室でのささやかな挑戦を書き綴ります。

この国の未来?

 ご存知の通り、日本は少子高齢化社会だ。今回紹介するのは、そんな悲惨な日本の現状をえぐってくるかのような作品である。

 タイトルにもあるように、「七〇歳死亡法案」という法案が可決された日本が舞台である。この法案は、「日本国籍を有する者は七〇歳になると死なないといけない」という、無茶苦茶なものである。だからか、作中でも政策について賛否両論が飛び交う。

 まあ、このような法案が、現実世界で提出され、可決されることはないだろう。だけど、小説の中だけでの話で終わらせてよいだろうか? もしかすると、現実に起こり得るかもしれない。

 国立社会保障・人口問題研究所によれば、2060年(ちなみに、僕たちは70歳)の日本の人口は8600万人、うち3500万人が65歳以上の高齢者になると推計されている。高齢者は総人口の40.7%となる。この時の社会の様相が想像もできない程の数字である。現在は、現役世代2.3人で高齢者1人を支えている計算になっている。2060年では、現役世代1.3人で1人を支える計算になる。

 どうだろうか? 今でも「世代間格差」や「下流老人」等が声高に叫ばれているのに、より厳しい状況になっていくのは明白だ。内需を拡大させ、経済成長を図ろうとしても、人口が減っては厳しい。

 こうなった時にでも、僕たちの社会は高齢者を―未来の僕たち自身を―温かく受け入れてくれるだろうか? 邪魔者扱いを受け、排除されないだろうか? そんな時に、「七〇歳死亡法案」が現実問題として立ち現れないだろうか? 漠然ではあるが不安は募る。

 本書では、法案の施行前期間の間に「寄付制度」が根づき、高齢者だけでなく社会的弱者を支え合う風土ができあがる。そのような動向を受け、法案は撤廃され、消費税を上げ、福祉国家を目指すために舵を取ることとなる。

 さあ、僕たちが生きることとなるこの社会はどうなっていくのだろうか? どうしていくとよいのだろうか? そんなことを考えるきっかけを与えてくれる一冊である。

七十歳死亡法案、可決 (幻冬舎文庫)

七十歳死亡法案、可決 (幻冬舎文庫)