小さな教室からの挑戦

小さな教室でのささやかな挑戦を書き綴ります。

緻密に創られている

 初・伊坂幸太郎本。今回読んだ『重力ピエロ』。確か映像化もされているよな、だからタイトルを見たことがあるのだよな、と思い手に取ってみた。つまり、深い意味はないということ(笑)

 一読してみると、東野圭吾の『流星の絆』と似ている、と感じた。兄弟や複雑な境遇や復讐というキーワードが重なるからだろうか。
 僕としては、ミステリー的な要素があり、時折偉人の言葉や歴史の話等があり、興味深く読むことができた。次が読みたい、どうなるだろう、と思いながら読むことができた。かなり緻密に計算されて書かれたような印象を受けた。また、「気休めは大事だよ」「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」等の言葉は、なるほどな、と感じさせられた。さらに、参考引用文献が載っていた。これは小説では、なかなか見たことがない。ここも僕にとっては好感が持てた。
 でも、物語のクライマックスからラストに向けての部分は、あまり納得できなかった。いろいろと仕出かしたのに、こんな爽やかな感じで終わってもいいのかい! と。
 いや、泉水や春、そして父が前向きに進めることは嬉しいよ。だけど、お咎めなしというのはいいのかな。まあ、あのおっかない親父に絞られたとは思うけど。罪を罪と感じ反省しないとなると、憎んでいた葛城と同じになるのではないか。春は罪と感じ反省はしている様子ではある。だけど、結果的には何の罰も受けていない。やっぱり、しっくりいかない気がする。ここは意見の別れるところだろうな。
 このような感想を持つということは、僕は決められた枠の中で慎ましく生きることが美徳のように、思っているのだろうな。決められた枠なんてぶち壊すぜ、というようなワイルドさに憧れているが、僕はそうではないのだな。いや、もしかしたら憧れていないかも(笑)。ちょっと違うでしょ、と思っているのかな。こんなことを、この作品を通して考えた。
 これを端に伊坂幸太郎作品を読んでいこうかな、と思うよい機会となった。 
重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)