小さな教室からの挑戦

小さな教室でのささやかな挑戦を書き綴ります。

自殺という現象を考える

 少し前から自分なりに「自殺予防」について考えている。それは、日本における自殺者数や自殺率の事実を知ったからである。そして、その事実は僕に危機感を覚えさせるようなものであった。子どもの前に立つ機会の多い僕にとっては重要な課題の一つである、と認識するようになっている。このような理由で、自分なりに「自殺予防」について考えている。

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  もう少し自分なりに「自殺」という現象について考えを深めてみたい、と思い手に取ってみた二冊を紹介する。

 一冊目は『生き心地の良い町――この自殺率の低さには理由がある』。

 この本は、自殺率の低い徳島県海部町は、なぜ自殺率が低くいのかということを丹念に調べ、書かれたものである。自殺予防因子はどのようなものか、ということが明らかにされることとなる。

 詳しい内容は本書に譲るが、僕が印象に残った記述を引用する。

生きていくのがつらい、生きづらさの嵩じた先に自殺があるとすれば、自殺の少ない社会は「生き心地のよい」社会であると言える。自殺対策とはすなわち、人間にとって生き心地のよい世界をどう造り上げるかという、試行錯誤そのものである。その第一歩をどちらへ向かって踏み出すか、ひとりひとりが自分自身に問いかけることから始まる。

「いかにしてこの世から自殺を減らすか」という命題には、頭を抱えてしまう人もいるかもしれないが、「どのような世界で生きたいと思うか」という問いかけに対しては、自分なりの答えを必ず出せるはずである。

  自殺予防や自殺を減らす、と聞くと「どうしたらいいのだろう?」と確かに思う。しかし、「どのような世界で生きたいと思うだろうか?」という問いにすると、自分なりの答えを導き出せるように思う。これを考えることから「自殺予防」を始められる気がして、少し楽な気持ちになった。

 二冊目は『自傷・自殺する子どもたち』。

 自傷・自殺する子どもたち側から、自傷・自殺という行為を見るという姿勢が徹底されている。もちろん、それに対峙する大人について言及されている箇所もある。

 例によって詳しい内容は本書に譲るが、僕が印象に残った記述を引用する。

私がいう、「信頼できる大人」とは、次の2つの条件を満たす人のことです。1つは、子どもの問題行動をいきなり叱りつける前に、まずは冷静に理由を聞こうとする姿勢があることです。支援に役立つのは、表面化した行動に関する善悪の判断ではなく、そうした行動をせざるを得なかった背景事情に関する情報だからです。つまり、信頼できる大人は情報収集が上手です。

もう1つは、問題をけっして1人で抱え込まず、気軽に相談できる専門家やそのほかの援助者のネットワークをもっている、ということです。つまり、信頼できる大人は孤立しておらず、自傷する子どもとは違って、高い援助希求能力をもっています。

もしも子どもの周囲に、2つの条件を満たす大人が少し増えれば、それだけでも救われる子どもはずいぶんといるはずだ、と私は信じています。

  自殺予防を考えると、子どもたちに何をするかということを考えがちである。それは間違っていることではない。しかし、その前に自分(大人)の在り方を省みる必要性があることに気づかされた。「信頼できる大人になる」ということは言うのは簡単であるが、かなり難しいことである。でも、だからと言ってそこで二の足を踏んでいる時間もない。自分から一歩踏み出せることはあるはずだ。

 いかがだったでしょうか。自殺予防を考えるには必読の二冊を紹介したつもりである。少しでも興味を持たれたのなら、手に取ってみることを強くお勧めしたいです。

生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある
 
自傷・自殺する子どもたち

自傷・自殺する子どもたち