「特別支援教育」は、現在学校現場で広く浸透してきている、と感じている。「特別支援教育なんて必要ない」と、正面切って言う人はほぼいないだろう。しかし、広く浸透した弊害なのかもしれないが、「これをやれば特別支援教育」なんていう誤解も広く浸透してきている、と感じている。
そんなことを丁寧に「違うんです、こう考えてみませんか」と、本書では語りかけてくれる。
一部になるが引用する。
自分を含めて、特別支援教育サイドの人間は、とかく従来の障害児教育の手法を当てはめようとしてしまうことがある。もちろん、整理整頓された教室環境が重要なのはいうまでもないけれど、子どもの支援ニーズに適しているかという検討がなされなければ「形骸化」するだけだと思う。
教育現場が今、本当に向き合わなければならないのは「合理的配慮の申請にどう対応するか」といった目先の問題解決ではなく、差別や偏見のない社会をどのようにつくっていくかを本気で考えることではないだろうか。
差別や偏見は、無理解と誤解によって生じる。合理的配慮を「甘え」や「易きに流れる」と考える発想は、間違いなく無理解と誤解による産物であるといえる。
このような記述に出会うことができる。もちろん、多くの子どもに有効な手法というか手立てはある。それを理解しつつ、目の前の子どものニーズを見極めて、手立てを打ちたい。
目の前にいる子どものニーズを見極め、そこに手立てを打ち、指導・支援していくことこそが「特別支援教育」ではないだろうか。そんなことを考えさせられた一冊であった。
特別支援教育を一から学びたい者から特別支援教育を深めたい者まで網羅される内容となっている。だから、是非とも一読をおすすめしたい。