小さな教室からの挑戦

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特別支援学級における1人1台端末を活用した指導・支援のまとめ

 紹介してきた特別支援学級における1人1台端末を活用した指導・支援について、実践を通して思ったことをまとめてみる。

(1)一人一人の教育的ニーズに合った指導・支援ができる

 特別支援教育の大切な考え方の一つとして、「一人一人の教育的ニーズを把握し、持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善または克服するため、適切な指導や支援を行う」というものがある。

 この考え方は、1人1台端末を活用した指導・支援でも大切にしないといけない、と考える。

 そうは言っても、これまでの紙ベースでの教材作成では、手間がかかり数を増やすのもバリエーションを増やすのも困難であった。また、ICT機器の不足のため指導・支援に一貫性がなくなることもあった。

 しかし、1人1台端末を使うことで、それらの課題が解消され、より一人一人の教育的ニーズに合った指導・支援が可能となった。つまり、1人1台端末は、一人一人の教育的ニーズに合った指導・支援を実現するための、重要かつ基礎的な環境整備になるということだ。

(2)   児童の主体性が引き出される

 1人1台端末を活用し、一人一人の教育的ニーズに合った指導・支援を行うことで、紹介したように子どもの主体的なな姿が見られるようになった。

 どうして、子どもの主体的な姿が見られるようになったのだろうか、と考えてみる。そこには、二つの要因が考えられる。

 一つ目は、子ども自身が学び方を選択する余地があるということ。

 例えばひらがなや漢字の書き取りだと、これまではドリルを使用するしか方法はなかった。しかし、1人1台端末を活用することで、デジタル教材を容易に利用することが可能となった。つまり、子どもが学び方を選択する幅が広がったため、子どもの主体性が引き出されたということだ。

 二つ目は、子どもが「できる」「わかった」と思えることが増えたということ。

 特別支援学級に在籍する児童は、低次の部分で大きくエネルギーを使い、高次の部分にたどり着くのが困難なことが多い。例えば時間をかければ文字を読むことができるがそのことに多くの時間を使ってしまい、肝心の文章読解を行うときには時間が足らなくなってしまう。よって、1人1台端末を活用し低次の部分を支援することで、高次の部分に取り組むことができるようになる。そのことで、子どもの「できる」「わかった」という経験を積み重ねることができたのだろう。

 学習の本質はどこかを考え、それ以外の部分が障壁になっている場合は、1人1台端末による代替を積極的に考えていくべきであろう。そのことが子どもの学習意欲を高め、子どもの主体性を引き出すことにつながるのではないだろうか。

(3)子どもの自立や社会参加につなげる

 主に学習場面で1人1台端末を活用したものを紹介した。もちろん、学習場面での活用は重要なものである。しかし、学習内容を理解させるために使うだけでは弱いように思う。

 1人1台端末はあくまでもツールの一つである。そのツールは、確かに学習場面で大きく役に立つ。しかし、ツールを使う目的は、学習内容を理解するためだけではないはずだ。ツールを使う本来の目的は、子どもがその子どもらしい学ぶ力を身につけ、自己実現を図っていくことではないだろうか。

 したがって、1人1台端末を学習場面で活用することを通し、子どもの自立や社会参加につながるようなより良い1人1台端末の使い方を考えていく必要があるのではないか、と考えている。だからこそ、学習場面以外での1人1台端末の活用を積極的に考えていく必要があるだろう、と考えている。

 

 これからを生きる子どもたちにとって、1人1台端末のようなICT機器を使用することは当たり前になっていくだろう。それに加え、将来においては現在よりもよりハイテクなICT機器を使用することになるだろう。

 したがって、そのようなICT機器を使えないよりは、使えた方がもちろんいいだろうし、子どもが自分に合った使い方ができればもっといいはずだろう、と考えている。

 このように考えると、学校教育において1人1台端末をさまざまな場面で活用することには大きな意義があるだろう。

 

参考・引用文献