この作品は、劇作家である平田オリザが、自らもワークショップなどで関わりを持ち続けてきた高校演劇をテーマに書き下ろしたものである。
平田オリザが提唱する、自然な会話とやりとりで舞台を進行する現代口語演劇理論が、ストーリーの中で示されている。文体にもその理論が反映され、「…って感じ」「…みたいな」「…とか」といったカジュアルで拙い言い回しによる、主人公の一人称語りが多用されている。
この作品は映画化された。監督は、あの「踊る大捜査線」シリーズを手掛けた本広克行が務めた。そして、主役とも言える演劇部の生徒役五人を、当時「ももいろクローバーZ」であったメンバーの五人が配役された。
プロモーションの甲斐があってか映画は盛況。40第回報知映画賞では本広監督の演出と「ももいろクローバーZ」の演技が認められ、両者に特別賞が贈られた。他にも39回日本アカデミー賞の話題賞、TSUTAYA映画ファン賞等も受賞。脇を固めていた、黒木華やムロツヨシや天龍源一郎の演技についても話したいけど(笑)、また別の機会に。
作品の中で、「スポーツと違うから、みんなが一体になる必要なんてない。どれだけ違うか、どれだけ感性とか価値観とかが違うかを分かっていた方がいい。バラバラな人間が、バラバラなままで、少しずつ分かり合うのが演劇」という記述がある。
これは、「インクルーシブ教育」についても有意義な示唆を与えてくれる記述である、と思う。
「バラバラな人間が、バラバラなままで、少しずつ分かり合うのがインクルーシブ教育」と、言い換えることもできるではないだろうか。
青春小説で間違いないではないのであるが、上記のように、筆者である平田オリザの演劇論にも触れることができる作品になっている。