小さな教室からの挑戦

小さな教室でのささやかな挑戦を書き綴ります。

僕たちには想像力がある

 「好きな作家はいますか?」と、聞かれたら僕は「辻村深月」と、答える。それぐらい、辻村深月の作品を読んでいる。
 今回読んだ作品は『のび太の月面探査記』だ。タイトルに「のび太の」と付いている。みなさんお分かりのように、映画ドラえもんのび太の月面探査記」の小説である。
 僕も大人になり、ドラえもんを観てはいない。だけど、辻村深月が書いているなら気になるな、と思いながらもなかなか手を出せずにいた。まあ、子どもたちが観るものだから、という思いがあったということだ。
 冬休みに近くの図書館に行ってみると、たまたま見つけることができた。せっかくだからということで、借りてみることにした。借りてみたはいいものの、やっぱりなかなか読み始めなかった。そして、明日から仕事が始まる夜という変なタイミングに読み始めた(決して現実逃避のためではありません・笑)。
 読み終わって感じたことは、僕は愚かだったということ。変なこと思わずに、早く読んでおいたらよかった、と思った。ドラえもんの映画なのだから、もちろんあの懐かしい、ドラえもん映画の感じがある。のび太がいつもよりしっかりしていたり、ジャイアンがいい奴だったり。そして、その中にちゃんと辻村深月がいた。僕にはそう感じられた。
 言葉にするのは難しいのだけど、辻村深月の作品を読んでいると、「ぐわー」っと何かが込み上げてくる瞬間がある。鳥肌が立つような感じ。わかりにくいとは思うのだけど、僕はそう感じている。それが、あったのだ。
 僕がそれを一番感じたのは第四章「友達だから」での、ドラえもんの言葉。
想像力は未来だ!  人への思いやりだ!  それをあきらめた時に、破壊が生まれるんだ!
 今回の敵である人工知能ディアボロの言葉への反論の言葉である。これをストレートに反論できるのって、ドラえもんの力でもあるし、辻村深月の力でもある。ドラえもんというSF(少し不思議)な存在が言うからこそ説得力がある。
 この言葉が、子どもたちに届いていたらいいな、と思う。もちろん、大人たちにも。僕たちは想像できる。想像力がある。それがあるからこそ、創造することができる。だからこそ、より善い創造をしていかないといけないのではないか。そんなことを考えた。
 蛇足になるが、物語のラスト辺りのルカの言葉もよかった。あれも子どもたちに届いていたらいいな。
 映像作品の方も観てみたくなった。冬休みは終わってしまって、また忙しい日々だけど、その内観てみよう、と思う。
 ドラえもんなんて、と思っている方は小説から入ってみてはいかがでしょうか。きっと何か感じられるものがあると思います。
小説「映画 ドラえもん のび太の月面探査記」

小説「映画 ドラえもん のび太の月面探査記」