「悪いことをした人に反省をさせると犯罪者になる」と、著者の岡本は断言する。もちろん、無根拠にこのようなことを言っているのではない。著者が刑務所において受刑者の更生を支援する過程で考えられたものである。
しかし、にわかには信じられない人も多いであろう。この後、著者が主張することについて簡単に説明していく
反省をさせる方法の典型的なものに、「反省文」を書かせるというものがある。ここで、悪いことをした者は、自分の所業についての反省を書き連ねる。そして、反省文ができあがった時には、自分のしたことについての反省やこれからの所信表明が書き連ねられていることになる。本当にそんなことができるのかな、と思えるぐらい素晴らしい内容で。
このことが問題である、と著者は述べている。以下に引用してみる。
反省文は、反省文を書かされた人の「本音を抑圧させている」ということです。そして、抑圧はさらなる抑圧へとつながり、最後に爆発する(犯罪に起こす)のです。
つまり、悪いことをした者の「本音」が聴かれぬままなのだ、ということである。
だから、著者は、問題行動が起きた時、ひとまず叱ることは控え、本人が問題を起こすことに至った理由に耳を傾けることから始めるべきである、と述べる。その過程で、自分の心のなかにたまっていた否定的感情がすべて出る。そのことがあって初めて、自分が起こした問題行動の過ちに気づき、本当の意味での「反省」が始まるのである、とも述べる。
学校現場で、カウンセリング・マインドを導入し、子どもの思いを受容しながら指導をする必要がある、と提言されて久しい。カウンセリング・マインドを持ち、子どもたちと接しようと考えている者としては必読の一冊である。