新学習指導要領が小学校では全面実施を迎える。そこで、手始めの一冊として読みたいのが本書である。この時期に手始めと言っていると遅いようには思うが…。でも、何も考えようとしていないよりはマシだろう。
著者は学習指導要領改訂に携わった合田哲雄氏である。合田氏は、自分の立ち位置を公教育と民主政の黒衣である、と述べている。だから、とてもバランスの取れた論が進められている。
その中に教師たちに力を発揮してもらいたいこと、背中を押してくれていることが随所に見られる。少し引用してみよう。
もちろん、未来社会はあらかじめ用意されている、すでに「ある」ものではありません。目の前の子供たちが「創る」ものです。だからこそ、「教育」は教師をはじめとする大人が子供たちに働きかけることにより未来社会の創造を手助けする営為。未来社会がこうだから子供たちにはこんな教育をしなければらないという受け身の発想ではなく、こんな未来社会を創っていくために、今子供たちにこんな資質・能力をはぐくもうという積極的な意思が求められています。
平成29(2017)年改訂で規定された主体的・対話的で深い学びの実現のための授業改善を進めるうえで、教師に求められていることは何でしょうか。
それぞれの教科の指導内容を学ぶ意義や意味を捉え直し、それを子供たちにしっかり伝えることだと思います。
(略)
単元のなかで、習得・活用・探究という学習活動をどう組み合わせるかはまさに教師の創意工夫、腕の見せどころだと思っておりますが、いずれにしても、「AI時代」「Society5.0」などと言われる社会の構造的変化のなかで、先生方が教えている日々の授業の内容は子供たちにとってたいへん大事になっています。
単に入学者選抜におけるふるい分けの道具だというのではなく、一人ひとりの子供たちが自分の足で立って、自分の頭で考えて、われわれ大人が想像もつかないような新しい時代を切り拓いていくうえで、重要な道具立てになっていると改めて確認し、子供たちに伝えていただきたいと思っております。
どうだろうか? 熱い思いが伝わってこないだろうか。「やってやろうじゃないの!」と思わないだろうか。僕はそんな思いを抱きました。合田氏に強く背中を押された気がしています。
このように、新学習指導要領を理解すると共に、力を与えてくれる一冊である。教師にとっては必読の一冊となっている。そして、繰り返し読み、学習指導要領の読み方・活かし方を確認していきたい。