小さな教室からの挑戦

小さな教室でのささやかな挑戦を書き綴ります。

ゆとり世代教育論「自尊感情を揺さぶる社会」

自尊感情を揺さぶる社会

 「自尊感情」とは心理学用語Self Esteem の訳語として定着した概念である。一般的には、「自己肯定感」「自己存在感」「自己効力感」等の語などと、ほぼ同じ意味合いで用いられている。

 そして、日本の若者の自尊感情は、ご存知の通り、諸外国の若者に比べて低い。このような状況は、もう物珍しさもなくってきつつある。「日本の若者の自尊感情は、諸外国の若者に比べて低い」と聞いても、驚きもしない。

 ずいぶん年齢を重ねてきたつもりであるが、まだまだ若者の部類である。だから、自尊感情の低さは、耳にタコができる程、聞いてきている。

 そして、この話に付随してくる、大人たちの言葉もよく耳にしている。「もっと自分に自信を持って」というような励ましめいた言葉。「だから、今時の若い者は頼りにならない」というような恨めしそうな言葉。どちらも、ありがたく頂戴しているが、どちらの言葉も、僕たち若者の自尊感情を高めるためのものとはなっていない。

 このような言葉を投げかけてくる者たちは「若者の自尊感情は、叱咤激励されればされるほど上がるものだ」と、楽観しているのだろう。わが身を顧みれば、そんなことあるはずがないということは骨身にしみてわかるはずなのに…。

 

適度な自尊感情

 前節では、今までのように社会についての論考になってしまっていた。ここでもう一度、自尊感情の話に立ち戻ろう。

 自分のことを自分で捉えるという概念には、「セルフ・エスティーム」という言葉をあてることが一般的である。「セルフ・エスティーム」は、日本語では「自尊感情」の他に、「自尊心」「自負心」「自己評価」「自己尊重」「自己価値」「自己肯定感」等、さまざまな語訳がある。

 この中の「自尊感情」は、必ずしも良い響きだけを持つわけではなく、自分に対する感情を中立的に表現して捉えられている。つまり、「セルフ・エスティーム」という概念は、「自信を持ちゆったりと構えること」や、「自重する」という、いわゆるポジティブな思考を指すだけでなく、ネガティブな側面も包括した概念に近いのである。

 自尊感情は、ポジティブな思考を指すだけでなく、ネガティブな側面も包括した概念に近い、と考える。そうすると、次の疑問は「自尊感情は、どの程度もつことができるとよいのか?」ということだ。

 自尊感情が低過ぎる、ということは、やはり問題だろう。自尊感情が低過ぎるというと、主体的に行動することは難しい。また、何事においても不安感を持つことにもなる。極端だが、自尊感情が低過ぎると、自分で自分の命を奪う、ということも選択してしまうかもしれない。

 一方で、自尊感情が高過ぎる、ということも、問題だろう。自尊感情が高過ぎるというと、過度な自己愛による防衛的な言動が生まれやすい。自己を防衛しようとし、周囲への攻撃性が高まり、トラブルが頻発することにもなる。

 さて、ここまでは考えられるのだが、「自尊感情は、どの程度もつことができるとよいのか?」という問いにははっきりと答えを見出すことは、今現在ではできない。

 だけど、この「自尊感情」ということを考えることは、僕たち「ゆとり世代」のことはもちろん、これからの教育・社会を考えることにつながる、と確信している。

 

参考・引用文献