小さな教室からの挑戦

小さな教室でのささやかな挑戦を書き綴ります。

国連に正対する①

日本への勧告内容

 2022年9月9日、国連の障害者権利委員会から日本政府へ勧告(総括所見)が出された。総括所見の内容は懸念93項目、勧告92項目、留意1項目、奨励1項目となっているようだ。

 その中でも強調されているのが、第19条「自立した生活及び地域社会への包容」と第24条「教育」となっている。簡単に言うと地域生活とインクルーシブ教育のことである。

 第19条の内容も気になるところではある。しかし、分量としても多くなってしまう。そこで今回は、「第1回政府報告に関する障害者権利委員会の総括所見・和文仮訳」の第24条についての内容のみを引用する。

 

教育(第24条)

   51.委員会は、以下を懸念する。

(a) 医療に基づく評価を通じて、障害のある児童への分離された特別教育が永続していること。障害のある児童、特に知的障害、精神障害、又はより多くの支援を必要とする児童を、通常環境での教育を利用しにくくしていること。また、通常の学校に特別支援学級があること。

(b) 障害のある児童を受け入れるには準備不足であるとの認識や実際に準備不足であることを理由に、障害のある児童が通常の学校への入学を拒否されること。また、特別学級の児童が授業時間の半分以上を通常の学級で過ごしてはならないとした、2022年に発出された政府の通知。

(c) 障害のある生徒に対する合理的配慮の提供が不十分であること。

(d) 通常教育の教員の障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)に関する技術の欠如及び否定的な態度。

(e) 聾(ろう)児童に対する手話教育、盲聾(ろう)児童に対する障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)を含め、通常の学校における、代替的及び補助的な意思疎通の様式及び手段の欠如。

(f) 大学入学試験及び学習過程を含めた、高等教育における障害のある学生の障壁を扱った、国の包括的政策の欠如。

52.障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)に対する権利に関する一般的意見第4号(2016年)及び持続可能な開発目標のターゲット4.5及び4(a)を想起して、委員会は以下を締約国に要請する。

(a) 国の教育政策、法律及び行政上の取り決めの中で、分離特別教育を終わらせることを目的として、障害のある児童が障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)を受ける権利があることを認識すること。また、特定の目標、期間及び十分な予算を伴い、全ての障害のある生徒にあらゆる教育段階において必要とされる合理的配慮及び個別の支援が提供されることを確保するために、質の高い障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)に関する国家の行動計画を採択すること。

(b) 全ての障害のある児童に対して通常の学校を利用する機会を確保すること。また、通常の学校が障害のある生徒に対しての通学拒否が認められないことを確保するための「非拒否」条項及び政策を策定すること、及び特別学級に関する政府の通知を撤回すること。

(c) 全ての障害のある児童に対して、個別の教育要件を満たし、障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)を確保するために合理的配慮を保障すること。

(d) 通常教育の教員及び教員以外の教職員に、障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)に関する研修を確保し、障害の人権モデルに関する意識を向上させること。

(e) 点字、「イージーリード」、聾(ろう)児童のための手話教育等、通常の教育環境における補助的及び代替的な意思疎通様式及び手段の利用を保障し、障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)環境における聾(ろう)文化を推進し、盲聾(ろう)児童が、かかる教育を利用する機会を確保すること。

(f) 大学入学試験及び学習過程を含め、高等教育における障害のある学生の障壁を扱った国の包括的政策を策定すること。

 

 仮訳であるので、少し読みづらい箇所もあるように思う。それでも障害者権利委員会の言わんとしていることは伝わる内容となっているように思う。

 さて、勧告の内容は多岐にわたっている。その中の要請されている(b) (d)に焦点を当てて考えていきたい。

 

引用・参考文献

障害者権利委員会(2022)“第1回政府報告に関する障害者権利委員会の総括所見”

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100448721.pdf