小さな教室からの挑戦

小さな教室でのささやかな挑戦を書き綴ります。

奈良女子大学附属小学校 学習研究発表会

 念願叶って? 先日、奈良女子大学附属小学校の学習研究発表会に参加した。

 奈良女子大学附属小学校(以下、奈良女)は、大正自由教育運動の流れを汲んだ学校である。2代目指導主事として赴任した木下竹次を中心として、自由で民主主義的な教育を展開した。木下の考えを紐解こうと思うと、今の時代ではなかなか難しい。『学習原論』という著作があるが、今は絶版。明治図書で復刊投票をし、気長に待つしかない。 

学習原論 (1972年) (世界教育学選集〈64〉)

学習原論 (1972年) (世界教育学選集〈64〉)

 

  奈良女では、学習者である子どもを中心とし、「しごと・けいこ・なかよし」を学習の3本柱として自律的な学びを展開している。次期学習指導要領で謳われている、「主体的・対話的で深い学び」のアクティブ・ラーニングを体現している学校である。

 朝の会、けいこ(造形)、けいこ(算数)の学習を参観する。

 この朝の会で奈良女の特徴を垣間見ることができる。一般的に想像される朝の会とは一線を画す。時間を目一杯使い、子ども達が思い思いに、自分の思いというか気づきというか考えを披露していくのである。それに教師が問いかけ、価値づけながら進む。そうすることで、学習と生活が密接になり、それぞれを往還する仕組みができあがる。まずここでの子ども達の語りに圧巻される。

 けいこ(造形)。1年生の子ども達一人ひとりが自律的に表現を行っている。もちろん、表現を行う場所は自己決定している。それは「~な表現をしたいから、~ちゃんとしよう」というように決定している。決してツルむではない。「~ちゃんとしたいからしよう」ではない。この差は大きい。自分の教室は後者。この差を埋めるにはどうしたらいいのだろうか? と考えながら参観をしていた。

 けいこ(算数)。6年間の集大成を見せつけるかのように、子ども達が躍動している。もちろん、大きな動きをしているというわけではない。自律的な学びを続けることで、子ども達ってここまでやれちゃうの!? と思わされる。下手に教師が一斉授業を行うよりも、学びが進むのではないか、と思わされる。ここまで至るには、何回も何回も失敗というか苦い思いをしたことだろう。だけど、トライ&エラーの場が保障されている。これが学校全体で子ども達を育てる強みである。奈良女の取り組みを、授業単位だけでなく、学校単位でも大いに学ぶ必要がある。

 講演は上智大学の奈須正裕先生。演題は「新学習指導要領が実現したこと、積み残したこと」。まだ新学習指導要領が全面実施されてもいないのに、積み残したこと(笑)。でも、これも学習指導要領改訂の中心的存在であった奈須先生だからこそ話すことのできる内容でもある。

 講演は奈須先生の見事な話術でぐいぐいと引き込まれる。合間合間で笑いもあり、とても心地の良い時間でもあった。講演の全てを記すことは難しいが、聞いて生まれた気づきを少しになるが紹介する。

①学校は社会や産業界が要請する子どもを育て、供給するのではない! もちろん、社会の変化とは無関係ではないが。

②教育法としてはドリル学習を減らしていくというのが本質。もちろん、ドリル学習を全てなくすわけではない。

③見方・考え方とは、それぞれのモードで見、考えられるようにするということ。そして、それを自覚化させることが必要。

 以上のようなものである。そして、奈須先生は最後に、今回の学習指導要領改訂よりもさらに10年後の学習指導要領改訂こそ大改革になるであろう、と予言されていた。

 大いに刺激を受け、大いに考える1日となった。自分の教室で自律的な学び手を育てる、「個」を大切にした学習を行う、ということを考えていくこととしよう。